第3回 秋葉原ブームが収束したときPCパーツショップが考える秋葉原ブーム(1/3 ページ)

» 2005年12月28日 09時00分 公開
[岩城俊介&古田雄介(アバンギャルド),ITmedia]

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アキバ実店舗に行くことで得られるメリット

 アキバのPCパーツショップ含む多くの実店舗では、ほとんどがWeb通販も展開しており、実際、通販事業をメインに据えているショップも珍しくない。それをふまえて現在の実店舗の意義を聞いてみた。

 実際に商品に見て触れられる利点は、すべてのショップが述べるところだ。いくつかの特徴的な店舗やその意見を紹介していく。

 「写真では分からない質感なども、複数の製品で比べられます。さらに店員に、その場でいろいろ気軽に質問できるのも大きなメリットだと思います」(T-ZONE.PC DIY SHOP)

 「Web通販では価格比較=最安値に走ってしまいがちですが、実際にパーツを直接見てみると、たとえ比較して高価なものであってもその分の魅力が伝わるということもあります。そのため、店頭で直接見て触れて、質問なども交えながら候補を絞り、あとでWeb通販で購入する人も多くなっていますね」(BLESS秋葉原本店)

 と、実店舗の有意義な点について各ショップは自信を持って話す。

 もう1つ、実物が見られることの延長にデモ展示ができることのメリットを説くショップもある。

 「時価100万円以上のデモマシンを組むのもよくあることです。もちろん100万円レベルとなると個人ユーザーではなかなか手が出しづらい価格。豪華なパーツを組み合わせたデモ機が並んでいるので、展示品目当てで来られる人もいます」(USER'S SIDE秋葉原本店)

 エンタープライズ向けのパーツにも強く、8wayサーバマシンといった高難易度のマシンを組み立てられる技術があることなどをアピールできるとするなど、ショップの“腕”を披露しているあたりは、さりとて自動車業界におけるチューニングカーショップのようだ。

photo USER'S SIDE秋葉原本店のウィンドウ側スペースには、常に5、6台の展示機が並んでいる

 パソコンショップ・アークでも、実用性を重視したデモ展示が好評を博している。今年、PCパーツだけでなくPCゲームも本格的に扱うようになり、店舗の奥に専用コーナーを設けた。最新ゲームをインストールしたマシンが3台用意され、自由にゲームを体感することができる。

 「デモ機を使ってもらい、どのゲームがどの程度のスペックで快適に動くかを体験できるようにしています。レスポンスの善し悪しなどはベンチマークだけでは見えてこない部分も多いので、実用的なデモを心がけています」

photo パソコンショップ・アークは、人気PCゲームをインストールしたデモ機を用意している

 高価なグラフィックスカード導入を予定するユーザーの多くは、3Dゲームが目的。CPUやメモリなどシステムを総合的にかつ客観的にチェックでき、たとえばこのデモ機よりもう少し速いのがいい、いやこれなら必要十分いけると分かったので同じ構成のを、といったような具体的な選び方ができるのは“ならでは”といえる。われわれPC系メディアでも比較のためのベンチマークテストやレビューを行うが、少なくともマンツーマンで接客することにより、ユーザーが確実に納得できる買い物ができるかという点では舌を巻かざるを得ない。

密集しているからこそアキバに出店する

 またアキバに店を出すメリットとして、PCパーツショップが密集している点を挙げる声がある。ライバル店がいないほうが独占できるのにと短絡的に考えてしまいがちだが、アキバほどまで密集すると様相は変わる。これはとくに、中古&ジャンクパーツを扱うショップがこのメリットを推す。

 中古&ジャンクパーツを扱う1店、ネットサイクルはこの理由をこう語る。

 「中古やジャンク品でもっとも売れるのは、じつはWindows 3.1や95時代の古いパーツなのです。NEC PC-9800シリーズを現役で使っている企業がまだ今もかなり多いのですが、故障しても取り替えるパーツがもはや正規には手に入りにくい。このため、アキバのジャンクショップを回る人が結構多いわけです。この範囲にこれだけの中古&ジャンクショップが並ぶのは、日本でもアキバだけでしょうし」

 それら企業にとってシステムを総入れ替えするにはコストがかかりすぎるという理由のため、従来の機器に使えるレガシーパーツを求める。売れ筋がやや移るにせよ、このニーズは10年以上は残るだろうと多くのジャンクショップが予測している。

photo 現在の売れ筋は、PC-9800関連製品と2年以内にリリースされた新しめのパーツで分けられるという。もちろん新しめのパーツは個人アキバユーザーに大きなニーズがある。ただしその中間に出たパーツはほとんど売れないという

 PC系に限っても数ブロックを歩くだけで20〜30店舗を一挙に見て回れるのは、まさにオンリーワンで、かつ最大のメリットといえるだろう。

 2004年と比較的最近にオープンしたショップ「ワンネス」は、「貸しチャリ」や「無料給水所サービス」など、PCパーツ販売以外の独自のサービスを打ち出し、アキバユーザー間でも話題を集めている。同ショップは「ただ商品を売るだけでなく、各ショップが独自色をもっと打ち出していけば、街は活性化します。単なるPCパーツショップではなく、複合的な新しいサービスを提供するという姿勢の先に、アキバの将来があると思います」と、安さや品揃えはもちろん引きになるが、それだけではないカラーを打ち出している。

photo ワンネスの無料給水サービス

 このことは、アキバヨドバシ開店に伴いコメントを残した某老舗大型家電量販店店長氏の「秋葉原の老舗ということでいわゆる“おごり”があった」(関連記事参照)という言葉もふまえ、絶対的な市場となっていた時代の売り手市場ではなくなっていることを端的に示している。

PCパーツショップが考える「IT産業の拠点」と「サブカルチャー」

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